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松本プロデュース vol.1 『ザ・コメディショー』感想 ::: 笑いが世界を救うのさ!

松本プロデュースvol.1『ザ・コメディショー』

 なにかやばいもの、いや、伝説が始まった瞬間に立ち会っちゃったんだと思う。


 強気なタイトルの通り、好きなだけ笑っていい空間なのが嬉しかった。笑って笑って拍手して、何故かちょっと泣いたりした。え、なんで?小道具の数エグい、セリフの量どうした?これが9本全部書き下ろしなのやばくないか?間の取り方が最高じゃん、うわそうきたか構成が効いてるな〜などと、終わってから駅までの帰り道に思い出し笑いしてたら、挙げたらキリがないほどの職人技が集結してることに気がついてしまって、「待って、こんなに贅沢でいいの…?」と逆に怖くなるレベルだった。



公演概要

劇作家・松本陽一が「やりたい時にやりたい人とやりたいことをやる」企画ユニット公演『松本プロデュース』がいよいよ始動!
第一回は、 演劇界で異彩を放つ4人の俳優を集めた コメディてんこ盛りのオムニバス公演!図師光博、高橋明日香、栞菜、浮谷泰史が、 一人芝居に、スタンダップコメディに、落語風演劇に挑む!

全9作品すべて松本陽一新作書き下ろしによるコメディショー!いざ開幕!

作・演出・プロデュース

松本陽一

出演

図師光博
高橋明日香
栞菜
浮谷泰史

公演詳細

日時

2022年3月11日〜13日
11日(金) 14:00/18:00☆
12日(土) 14:00/18:00☆
13日(日) 13:00/17:00
☆…アフタートークショー

劇場

ステージカフェ下北沢亭




 お話ごとに感想書いたんだけど、箇条書きにしてる部分はここ面白かったよポイントです。言い回しがツボだった、ぐっときた、ここ見て!などの意。一度でも舞台や配信で観た方なら「あ〜はいはい笑」になると思うし、これから見る方にとっては字面にしても何も伝わらないから大きなネタバレにもならないでしょう!



お品書き

「FOUR-KILLER」 幕開き四人芝居

 開幕にピッタリなワクワク感があって大好き!!!小説の手法にありそうというか、ラストの何行かでようやく物語の全貌が見えるので、わかった時の「あ〜!」という嬉しさはひらめき系クイズに正解した時みたいな気持ちよさ。分かった上でもう一度見ると一番印象が違って見えるのがこれだな。実際にこんなおしゃれな会話が繰り広げられてんのかも、なんて想像するとまた楽しいやつ。

・血の臭いがするぜ
・そう!俺の名前は、
・ちょっと黙っててくれるこの単細胞?!
・先っぽに塗った麻薬でぶっ飛ぶわよ
・ケチャップ
・この界隈じゃ掃除屋って呼ばれてる
・笑いが世界を救うのさ!

 適材適所とはこのことで、4人それぞれが最もかっこよく見える得意分野を狙った配役だった。
「笑いが世界を救うのさ!」とスーツ決め込んだ4人がザッと並んだ光景にはぞくりと鳥肌が立ったよ。





「出禁ちゃん」 図師光博×栞菜

 面白かった〜!アイドルオタク・口喧嘩・バトル。開催地が握手会場待機列なだけに迷惑極まりないはずがいきすぎるとこんなに面白いのかと。
 オタクスタイル・図師のすごいところは「ほとんど出オチなのに最後までずっと面白かったところ」です。なんなん?最後までチョコたっぷりなポッキーかよ、無敵じゃねーか。
 栞菜は可愛い女性オタク気取りながらもきゅるきゅるとよくまわる滑舌が逆の効果を生み、情報収集力含めあらゆる場面で図師さんと負けず劣らずのキモさが露呈していたのがよかったです。


・裏設定
・おかわりどうぞ
・しおりんVSシオリーヌ
・先ほど陳述した通り
・足立シックスティーナイン
・戸籍謄本
・私と結婚したらどうなるかわかる?
・ガチお姉ちゃん
・この人出禁に…ならないのか?
・バレンタイン配信神回だったよね
・課金した貢いだライブに通った投げ銭した課金した貢いだ…
・\LINE/

バレンタイン配信が神回だった、という話でバトルが一時休戦したの、オタクっぽくて好きだったな〜!
「わかるわかる!」「あの時の髪型めずらしくローツインテで」「えっロー派?俺もロー派!」
「あの時着てたキャミソールが超可愛くて」「わかる!俺それ買った」「買ったの?!あとでブランド教えて!」



「絶望のカレー」 高橋明日香×浮谷泰史

 東芝の長編CMにならないかなこれ。
 ツボにハマった時の戻ってこられない度No.1ですね。漂う緊張感と中身のしょうもなさとのギャップがひどい。彼らが真剣であればあるほど、喧嘩がヒートアップしていけばいくほど、馬鹿馬鹿しさにお腹の底から笑いが込み上げてくる。カレー、電子レンジ、ガスコンロなどといった効果音と照明を味方につけた一幕でもありました。沈黙を武器にできる二人でもあったので、じっとりと居心地の悪い空気に差し込まれるカレーの効果音が効くんだわ。いやカレーの効果音って何やねんって話なんだけど、二人があまりにも落ち着いた喋り方するものだから、それさえもじわじわくる。ドライヤーMVPでしょ笑

・(スプーンがカレーにぶつかる音)
・モエミちゃんの〜
・ほわぁ〜ってなるのは……いい
・それはすみませんでした!!!
・寝言の録音
・「……え?」
・私の気持ちを想像して?
・これが、東芝のテクノロジー
・くそっアンペアめ!
サザエさんVSドラゴンボール
・ちょっと溶けた

 高橋さんの冷た〜い声ほんとによかったな〜。早送りボタン押したかな?って思うような「作り置きした冷凍保存のカレーを湯煎して温めて」のあのセリフの正確さと、完全に怒り通り越して諦められてるじゃんという対応にこっちまで冷や汗かいた。
 浮谷さんは本当はお笑い出身なんじゃ?と疑うほど間の取り方が素晴らしい!「肘に当たってホワァ〜ってなるのは……いい」、「……え?」とか、今ここ笑いどころってポイント的確に撃ち抜かれてる気がして、わかってても笑っちゃうの悔しかったなー。

 『出禁ちゃん』の直後がこれっていうのも最高!同じ喧嘩でも、図師VS栞菜はプライドをかけた雪合戦、如何に相手よりポイントを稼ぐかという足の引っ張り合いなわけですが、高橋VS浮谷のこれは持久戦、うーん、命懸けのだるまさんが転んだかな。既に一つ地雷を踏み抜いてしまった旦那にはもう絶壁を乗り越えるルートしか残されていない。二人の幸せな未来を取り戻せるのか?!

ラストのセリフを聞いたあとこれを言ってみてください、なんだか納得しますよ。
 「東芝の長編CMか?」





「楽屋騒動」 図師光博 創作落語風演劇

 創作落語風演劇、最っ高!話の構成がめちゃくちゃ面白い!後輩の自殺を説得したい二瓶が、自分の創ってくネタと現実世界の両方に振り回されてく二重構造。どんどん没入していって、手に汗さえ握って下げ(オチ)がどこにつくのかと見守ってしまう。
 落語の人物設定でよく見る、泣き言いってる奴の方が図々しくて頑固、っていう感じもハマってて、彼の飛んでくような高い声で「オイラもう、死ぬ!」なんて叫ばれちゃあ笑わずにいられないよ。図師光博は周りの予期せぬ介入に俺が?!?!と困って慌てふためく役回り、”良い”ですね。

・いいじゃん
・セッティングしときましたよ
・合コンの正式名称
弁当屋
・俺が肩代わり?
・一発ギャグ
・どうせ私はデッドオアアライブ
・めちゃくちゃ滑ってますよ!!!

 落語に介入してくる現実世界の面々がこれまたいい仕事してんだよな!マネージャー栞菜の”長いこと二瓶と仕事してきたんだろうな〜”な空気感。スタッフ浮谷の”いるよねこういう一般人”な対応、弁当屋高橋明日香の”狙ってない天然”を狙ったおとぼけ店員。大好き。


余談①「漫才で30分は辛すぎるでしょ!」というセリフをスタッフ役の浮谷さんに言わせたのは偶然、てのはもちろんわかってるんですが、前に浮谷さん、バルスキッチンのズドンさんの誕生日イベントの時に、2人で漫才をやってみて気がついたら30分経ってた(しかもかなり笑いを取ってた)っていうことがあったので、勝手にふふふとなってしまいました。

余談②千秋楽が終わって何日かしてから、妹とコメディーショーのどれが面白かったか談義をしていたんですが、この落語を真似っこしてひたすら二人で笑い転げるっていう遊びをしました。身内と観に行くと家で手軽にオタクトークできるのがいいですね。あと落語騒動は覚えやすいので一人で遊べます。




「復讐の予習」 高橋明日香 一人芝居

 あのねえ、これ見ると高橋明日香のこと大好きになりますね。ネット通販大好きな夢見がち女子が、きっと彼氏は結婚詐欺師で私騙されてるんだわ…!と復讐に燃える、その準備。まずもってタイトルが秀逸!彼女自身が届いた荷物を運んできて、着替えさえも物語に組み込んでるのも可愛いよね。

・メルカリーーー!!!
・ってレビューに書いてあった
素手で扱っちゃダメー!
・エンゲージリングがまぶしすぎるから
・よそ見させる(15秒)
・これでよし!って待ってぇ…?!
・ロシアはジャガイモ
・これはいる!

うちの母親が大絶賛してました。よそ見のくだりで何なら自分よりも笑ってた。
セットの机に固定されてたはずのアロマキャンドルが冒頭で倒れちゃった回の立て直し方が好きで、キャンドルを別の位置に立たせて「動かないでよ〜」的なこと話しかけるのもあるあるだし、次のシーンに移ろうとしたら倒れちゃって、それをみてた客席の気配を察したのか「ん〜?また倒れちゃったか」みたいに対応してたのもスーゲーよかった。

状況整理のための一人言→問題発覚→作戦変更→これで完璧✨→最初に戻る っていう至ってシンプルな、見事なまでの一人相撲。『ガラスの仮面』をお好きな方なら絶対わかってもらえると思うのだけど、奇跡の人のオーディションの課題1を思い出して、あれもやりようによってはこんなコメディーになるのかも…と”解釈”や“演出”といった調理法の奥深さに唸りました。



「花魁喜譚」 栞菜 一人芝居

 聴きごたえあった。interestingの方の面白いって言えば伝わるかな、例えば落語を聞いて『まんじゅうこわい』ってオチの"皮肉"をわかってなるほど面白いって思うのと似た感覚だった。実は古典文学の短編でしたって言われても驚かない。世界観がしっかりしてた。

 栞菜さんいいね〜〜〜今回で初めて拝見したんだけど、お声はハスキーな響きが艶っぽくて本当に素敵。不機嫌な低音と、相手に取り入ろうとする猫撫で声との落差も素晴らしい。第一声が遠くの火事を見やっての「ハ、燃えてら」だもんね、こりゃ一筋縄じゃいかない女の話だってすぐわかったよ。男から逃げ回るシーンは音楽も相まって、アニメのデフォルメみたいな、足の部分がぐるぐる巻きになってるあれを思い出してなんだか可愛らしくて笑っちゃったよ。遊女の着物もレースとか使われててめちゃくちゃ可愛かった。

 照明と少しの効果音と、彼女の目や反応やで、遠くから火事の喧騒が聞こえる吉原の部屋も、筵(むしろ)を敷いただけのジメジメした小屋も、角海老楼のきらびやかな燈も、ちゃんと彼女の背景に見えてくる。ものすごい説得力でした。

 ただ笑いをとるだけじゃないんだぜこのコメディーショーは、という大人の気概を感じた作品でもある。


「エロ本の行方」 図師光博×浮谷泰史 & 高橋明日香×栞菜

 タイトルの時点で勝ち確でしょこんなん!
終始ドッカンドッカン面白くて、まさに「待ってました!」とツトムたちが入ってきた時点で拍手を送りたいほどの間違いない笑いだった。年末の感謝祭とか観たくなるやつ(?)。

・かっくぃーーじゃんか!
・「え……?」
・ブックスいづみ
・ちょ男子ぃー!
デラべっぴん
・ここらの中学全部シメられる
・隠れろ隠れろ!の2回目
・ほら、だって
・世界が終わる世界が終わる
・君だけは生き残るんだ
こっくりさんしてただけ
・おかえり


 汗だくがむしゃら男子コンビの息もピッタリだったよね!袋からエロ本を取り出すまでのはしゃぎ方や、エロ本の行方が判明した時の言葉にならないほどのどうしようどうしよう!!なテンパり方、動きだけであんなにわかるものなんだな〜ってひたすら笑ってた!シンクロ👏
 図師さんがいっぱいいっぱいになってたんだか、狙いにきてたのかはわからないんだけど、エロ本を入手した!っていうのを説明する時に、セリフ飛んだのを誤魔化そうとしたり、「お前よだれ出てんぞ笑」って浮谷さんに突っ込まれてたり、「聞いて、聞いて!…聞いて!」などと何回も同じセリフを擦ったりしてて、毎回その辺りの遊びは楽しみにしちゃったな…
 浮谷さんは「え……」の言い方マジでずるくないか〜〜〜?!超笑ったわ…間の取り方が絶妙!テンションを高めるだけ高めておいて、理解したことでふっと正気に戻ったみたいなあの脱力がたまらない。ちなみに浮谷さんは『絶望のカレー』含めると「え」だけで3回も笑いをとっている。

 セーラー服の眩しい女子組もよかった〜!清純学級委員とオマセさんで強気な小ギャルの取り合わせがかわいい。栞菜の「ちょ男子ぃー!」が最高に決まってるし、キヨミの「おかえり」で泣きそうになったのは絶対に自分だけじゃないと思う。


スタンダップコメディって」 浮谷泰史 一人芝居

 あの人の芝居が大好きだ。
 浮谷泰史の一人芝居を待ち望んでいたオタクとしては発表時点で既に感涙ものだったのだが、観た上で贔屓目抜きにして言いたい、あの人の芝居は本当にすごいと思う。 

 浮谷さん、視線を集めるような芝居するよね。一人芝居だけど、くっきりと"もう一人"見える。そこにいるし、そこにあるし、一人だから注目されてるんじゃなく、一挙手一投足から”相手”を読み取れるお芝居にすうっと引き込まれた。
 説明的なオウム返しもほとんどないのに、彼の反応だけで今何を言われたのかも全部分かった。台本で答え合わせができるほど。ジョークによる話の運びも間もリアクションも巧みだが、一番はやっぱり目だろうか。思い出が悲しみが後悔が、コメディアンのこれまでが感情としてこちらに流れ込んでくるようで。そして、あの背中。人が体を震わせて泣く様子は、笑っている様ともどこか似ているなぁと感じたりして。道化師、という言葉を称賛の意で贈りたい。
「コメディアンが涙誘っちゃった!」
堪えたのだけどやっぱり泣いてしまったよね。



 ねぇしかもさ〜〜〜!この一人芝居で出てくるジョーク全部自分で考えたってマジですかやべ〜〜〜〜〜〜!!!

 アフタートークで「台本に『ここでジョーク』としか書かれてないんです」と聞かされた時の衝撃ったら。

《ジョーク》
《ジョーク》父と子にまつわるジョーク。

最初の2個以外は全部こんな感じで、逆に引いたよね。

なんなら『FOUR-KILLER』終わりのお品書き紹介の部分は読むの楽しみにしてたのに、

オープニングアクト終わりにコメディアンによる作品紹介が行われる。

とだけ…😇(さすがに作品紹介の方は本あっただろうけれども…載ってないだけであったんだよね?あったと言って)

 あとさあ!ストーリーテラーとしてのコメディアンの存在が、9品のメニューに大きなまとまりを見出していた感じがして、めちゃくちゃよかったですよね?!?!ああいう想像力をぐわあっと掻き立てられるような粋な役どころマジで大好きなので、この配役には感謝で胸がいっぱいです。

話変わりますけど
https://yaebabun17.hatenablog.com/entry/2020/12/09/175159yaebabun17.hatenablog.com
『ザ・ボイスアクター オンライン編』ではツッコミで無双していたほどの希代のツッコミニスト・浮谷が、全作コメディーにもかかわらず、ツッコミ入れてない!今回はそれが武器ではなかった、と気がついたのは公演も折り返してからで。その事実もとてつもなく嬉しかったです。


 千秋楽の挨拶の時に、vol2やるかって話の流れで図師さんからの「浮谷ジョーク係で続投したら?」って悪ふざけに、「勘弁して!どんだけジョーク考えたと思ってる!笑」ってガチのヤツ出てたの、ごめんだけど笑っちゃったよw 
 松本さんからの「締めのジョークを」と無茶ぶりされて、頭抱えながらも最後にバシッと決めてたところ、かっこよかったな。


白身魚アクアパッツァ 〜諭吉風小銭を添えて〜」 全員出演

 もうここまできたらデザートですね、ゆったりとフィナーレとして楽しめました。
 とあるリストランテの厨房で、たまたま起きた珍事件。非日常の発生によりクリスマスの忙しさそっちのけで彼らの本音や人間性が露わになってく、その人間模様が楽しい作品でした。何が良いってね、緊張感がないところです。今その話する?気にするのそこ?そんなふうに思ってたの?え、今更そんなこと言う?がちょいちょい起こる。
 仕事仲間として良好な関係性がセリフの端々で垣間見える中、他人事だからできるふざけた物言いとか、他人の物だからこそ気になる野次馬精神とか、人間としてのあるあるが満載。



・ウニとテナガエビのパスタ
磯丸水産
アクアパッツァの作り方なんて知らないよ
酔拳みたいになってんじゃん
・レシート
・クリスマスの奇跡に乾杯
・でも財布の中身は見た


 それぞれの性格がわかりやすいのもいいんだ〜!
 シンさんは眠気と戦いながらも料理の味付けには自信あり、仕事へのプロ意識。徹夜の原因として足立69がここで出てくるのマジで嬉しいよね。おまけに”しおりん勢”だし。
 チカコは噂話好き。「やっすい化粧品買い込んだレシートとか」「返せないよぉ!」「これ以上はそっとしておいて!」の言い方、悪意あるでしょ?笑
 トウゴは「俺はパスティッチェーレだぞ?!」と言っちゃうあたりこだわり強め、自惚れタイプ。なにそれ?と言われて「パティシエのイタリア語」と返した笑顔が好きでした。思い込み激しそう。なんだかんだ一人後ろで落ち込んだり泣いたりしててナギサとの温度差に笑った。人の話聞きな。
 ナギサは努力を他人に見せたくない、さばさば自分の仕事してるけど面倒見体質で実は熱い子。「ミラノの下町で食べたパスタがほんとに美味しくて」と語る彼女の長台詞、うるっときちゃうよね。少々ニッチかもしれないが項垂れるトウゴに向かっての「どいて」の言い方がドストライクで好き。

 最後の最後、ナギサ渾身の「何でだよ!!!」は、漫才でいうところの「もういいよ」にも似た何かを感じました。お疲れさまでした。



脚本・演出:松本陽一

 ドカドカ笑いをとることだけがコメディじゃないとばかりに、あらゆる「笑いの種類」を網羅してた90分。そもそも9本書き下ろして何?演劇界の東大入試問題たる『熱海殺人事件』にもある種引けを取らない質量じゃん。「その役者をイメージして書いた」と当日パンフレットに書いてあったけれども。特別カリキュラムを個人の能力別に用意してくれる予備校の先生か?

 何がすごいって、限りなくショートコントに近い手法を取りながらも、全部が「芝居」だったから成り立つ作品であることだと思う。決定的なのはツッコミとボケっていう概念がないこと。それっぽく見えても「キレる」「動揺する」「状況を整理する」「話に割って入る」などと全部が役割を担ってて、誰も話聞いてないことないし脈絡ないことしない。だからアドリブなんて数えるほどしかない。それでも何回もおかわりしたくなるし、何度観てもやっぱり面白い。仕掛けと遊び心の計算高さはピタゴラスイッチのそれだよね。

 動き出してからは役者に任せるとして、起爆剤としての氏の前説もよかったな。
「窓を閉める」という行為だけであんなに笑いとる人いないでしょ!初日の夜のアクシデントはマジで持ってた💪


プロデューサー:松本陽一

 松本氏の采配には恐れ入る。舞台度胸と笑いのセンスがピカイチの面々を揃えたこのキャスティングの豪華さもさることながら、相性もバランスも組み合わせも抜群ときた!

 今回に限っての個人的な所感ですが、女性陣は二人とも精密さに長けてて、男子組はパワーで押し切るタイプ。
さらに芝居を印象で分けるとしたら
図師さんは熱を放出して生き様を見せる。
浮谷さんは空気を掌握して視線を集める。
高橋さんは別人格へと変身して世界に溶け込む。
栞菜さんは佇むだけで世界に説得力を持たせる。
といったふうで、それぞれの魅力も得意分野も異なる彼らだから、どんなふうに掛け合わせたって楽しいし新しいし間違いないわけです。氏曰く「見てみたい組み合わせを書き出したら本当は13本あった」と制作秘話を明かしたのも頷ける。「もしこの4人でvol.2や3もやれるとわかっていたらこんなに詰め込まなかった」とも言ってたので、そうだよね、この一回限りかもしれないからこそ。贅沢だな〜!
 きっと次回プロデュースは総入れ替えなんでしょう、ええ、それのが面白いとも思います。ですから、vol.5か10ぐらいで初代キャストの凱旋させたってください。気が早い?それぐらい次の期待値高まってますから。

“生で芝居を観る”ということ

 会場のステージカフェ下北沢亭。初めて行ったけど、あの距離感で芝居見られるのはよかった。ザ・小劇場。空気の変わる瞬間もエネルギーも客席の熱気もビリビリと肌で感じられる。生の観劇体験として極上の時間になった。制作陣やお客の一部から「会場間違えたんじゃない?」という声が上がるほど、彼らの声量はあのサイズの箱で収まりきってなかったのも楽しかったな。
 スタンディング・オベーションが起きた時に、役者から「ここ下北沢亭だよ?!」「すごい圧…!」「ちょっと怖いから座って!笑」というリアクションされるなんてね笑
 劇場に入る時、終わって外に出た時、必ずカレーのいい匂いがしていて、ああ今度下北沢に降り立ったら、そうでなくてもどこかでカレーを食べる時にはこの舞台のこと思い出しちゃうんだろうな、なんて未来の予感がしたのも大変よかったです。

 大千秋楽で、キャストが「終わったー!」って手叩いてはしゃぐカーテンコール、初めて見ました🤭誰か一人でも笑いを取れば勝ちという訳でなく、全員で繋いで乗り越えて走り切ってゴールを目指すことが勝利条件だったからなんだろうな。終わった後の爽快感や満足度が本当にすごかった、客席にいただけなのにお腹いっぱいで達成感さえあって。”観戦”してたのはプロレスではなく駅伝、いや、トライアスロンだったのかも。沿道で応援できて本当に幸せでした。すごくすごい時間をありがとうございました!お疲れさまでした〜!!!!!!!!


配信 ※最終は3/27まで

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「笑いが世界を救うのさ!」
いやマジで免疫力めちゃくちゃ高まったと思うわ。全人類早く見な?


自堕落